海野研究室
これまで紡がれてきた歴史を探究しこれから生きて活用していく方法を構築する。
研究テーマ
日本を中心とする東アジアの木造建築技術史を主な対象に、その設計理念・社会背景・造営体制と儀式にも及んで読み解き、更に建築がどのように維持してきたのか即ち建築メンテナンスの歴史を解き明かしつつ、文化遺産の保存・継承に関する枠組みを構築することをテーマとして扱う研究室です。時代としては、原始から近世を中心としますが、木造であれば近代も射程に入りますし、国は問いません。
建築学と歴史学の両方に跨る建築史は、文献史・考古学・美術史・歴史地理学・民俗学など様々な隣接分野とも大きな関わりを持ち、総合的な学問領域といえるため、多分野との共同作業・共同研究も多く行っています。学生の研究テーマとしては、研究室のテーマに限らず、個々人の学術的関心に応じて自由に選択・探究していきます。
研究活動
研究室の主な活動としては、大学院ゼミ、史料読む会、中国・古代建築研究会、そして加藤研と合同で行われる月例研は、それぞれ月に1回、ほぼ通年で行っています。即ち、毎週ゼミということになります。
史料読む会は、古文献・大工技術書・古図面・名所図会などを通して、建築情報・建築思想・工匠組織・大工技術・都市形態などを解読する研究会です。最近では、中井家文書という江戸時代を通して幕府の京都大工頭を世襲した工匠家の文献・絵図史料などについて検討しており、冬には東京大学史料編纂所と連携して京都府立京都学歴彩館で国際研究集会を行い、研究の進捗と成果を報告しています。
中国・古代建築研究会で、留学生は中国語の研究材料を日本語訳して、日本人は日本の古代建築の修理報告書を読み解いて、両者を比較することで、国際的な東アジア建築史の構築を試みます。
調査活動
通年で行う研究活動では、フィールドを中心に楽しく研究をしていくことを目指しているため、随時、現地調査とゼミ旅行を挟んでいます。
現地調査は、文化財の保存や活用と、調査方法や資料作成の能力を身につけることを目的のひとつとしています。基本的に国内の町並み・単体建物などの歴史的建造物について、現状実測・文献調査・価値評価・報告書作成を中心に行っていますが、時々活用方法についても検討してきます。
ゼミ旅行とは、毎年9月や10月に、1~2つの都市を中心に歴史的建造物・街並み・修理現場・遺跡などを見学することです。
それ以外にも、中国山西省建造物調査・韓国ソウルと安城市建造物調査など海外調査は不定期に行っており、学生が知見を広げるために、同行することもあります。
日本建築史と現代社会
文化財や古建築に関する専門職をはじめとし、様々な活躍の場があります。例をあげると、イメージしやすいものでは、文化財建造物の保存・活用のために、文化庁や地方自治体などで文化財保護担当者として貢献している人の多くは日本建築史の専門家です。また、文化財の修理のために、文化財建造物保存技術協会や京都・奈良滋賀などの教育委員会などで修理現場を組織する修理技術者を務めます。このほか、文化財の研究のために、国立文化財機構などの研究所・博物館・大学などで学芸員・教職員を務めます。更に、日本の文化財修理の方法・理念を使って、JICAのような国際機関で、海外で文化遺産の保存協力に関与することもあります。
これに加えて、得られた知識を持って、和風建築の設計などに取り組んでいる建築士・コンサルタントなども多く存在しています。
history.arch.t.u-tokyo.ac.jp/unno