加藤研究室

歴史上の魅力溢れる建築・都市を研究し、現代・未来の建築のための建築理論を構築する

研究テーマ
建築を竣工年代によってカタログ化(点の建築史)するのではなく、建築が時間の変遷とともにどのような変化を遂げていったのか(線の建築史)という点に着目します。加藤研究室では、西洋および近現代を中心に個人個人が自由にテーマを選び、ゼミでの議論を通して研究を進めています。建築様式のみならず、建築論や建築における素材/構築の問題、メディアの諸相、都市/地域の広がりなど、多様な切り口から建築史を再構築することを目指しています。

―建築論―

21世紀の現在、近代における建築学の常識が、多くの場面で常識として通用しなくなり、建築の現場ではさまざまな新しい試みが登場しています。建築史学の分野がなすべきは、近代的建築観を一歩引いた視点から歴史的に位置付け直すことだと考えています。

近年の研究テーマ例:
「出来事を超える建築:アルド・ロッシと戦後イタリア建築文化」
「後期ルイス・サリヴァンにおける「民主主義」―民主主義をめぐる言説と建築装飾における社会思想の表現について―」
「建築と宗教 ~Dom Hans van der Laan の建築論を通して~」

―素材/構築―

K.フランプトン『テクトニック・カルチャー』以後、建築の物質性に着目する方法論が重視されています。構法・材料・構造といった具体的なモノとしての建築を対象化しながら、単なる技術論にとどまるのではなく、空間論、建築理論にまで発展させる研究を目指しています。

近年の研究テーマ例:
「ゴシック期フランスにおけるトリフォリウムの建設に関する基礎的研究」  
「クリスタル・パレスの建設について:建築構法史学の試み」
「バラックとはなにか──語義変遷に見る仮設性の揺らぎ」
「中世イングランドのホール: 行動様式の変遷を背景とした空間演出に関する考察」

―メディア―

近代以降における建築メディアの広がりは、建築学や建築文化の発展・普及に大きな影響を与えています。建築それ自体がひとつのメディウムであると同時に、図面やドローイング、建築写真、作家のステートメントや建築批評など、建築表象のあり方は多様です。こうした建築メディアや建築表象の多様性は、建築と他分野を繋ぐ学際的な視点や、専門家と社会・世間一般を繋ぐ視点をもたらしてくれます。

近年の研究テーマ例:
「両大戦間期アメリカ合衆国における建築の前衛:「構造研究会(SSA)」の建築思想とその展開に関する研究」
「建築の翻訳者たち──近代日本の建築系雑誌における海外文献受容」
「70年代ピーター・アイゼンマンの理論と実践: アカデミズムの系譜と活字媒体・写真による発信」
「〈現場写真〉と近代建築をめぐる史的考察」

―都市/地域―

建築は単体で成立するわけでなく、その立地する都市/地域に根付いたものです。都市/地域は政治や経済などの多様な影響の元、その土地それぞれの文化を形成しています。建築を、それを取り巻く環境の中で相対化することで、建物のみでは見えてこなかった価値を明らかにできます。

「現代ノルウェー建築文化の形成 ──1990年代におけるC. ノルベルグ=シュルツの活動に着目して」
「近代商業施設の建築様態─ロンドンの都市文化から見るハロッズ百貨店の分析─」
「ナバーラ州とアラゴン州における都市形成史と空間構成の比較研究 ―サンティアゴ巡礼との関係に着目して―」
「イアン・ネアンのサブトピア論 —戦後イギリスにおける郊外開発批判とその影響—」
「環境危機の「都市プロセス」論 1970 年代アメリカの都市・建築論と環境思想」

石上純也〈水庭〉研究室旅行より
石上純也〈水庭〉研究室旅行より
山脇巌〈三岸アトリエ〉の見学
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内田祥三〈三崎臨海実験所〉の解体に際する実測調査
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