Department of Architecture – The University of Tokyo

2018年度 卒業制作

辰野賞

寺田 亮   LIVER of Metropolis -下水処理場×植物工場-
(日本建築学会「全国大学・高専卒業設計展示会」出展)

中村達太郎賞

芝村 朋宏  丸の内探訪 -インタラクティブな三次元空間における街の歴史・データの可視化-

奨励作

Aコース(設計)
内倉 悠   迎合か/迎合か

 (日本建築家協会関東甲信越支部「第28回 東京都学生卒業設計コンクール2019」奨励賞 受賞!)
荒川 実緒子 にじみあう日常
 (近代建築社「卒業制作2019」出展, 三大学合同講評会出展)
植木 祐地  KICHIJYOJI LIVING
久野 遼   雪と共に来たる
下田 悠太  the pop up village -一台のトラックに積み込める建築群-

 (レモン画翆「第42回 学生設計優秀作品展」レモン賞/竹内昌義賞, 三大学合同講評会 隈研吾賞 受賞!)
竹中 信乃  銭湯、今を生きる。
 (三大学合同講評会 グランプリ 受賞!)
野田 早紀子 水路と舟と子どもの島〜史跡・第三台場の再活用計画〜
 (日本建築家協会関東甲信越支部「第28回 東京都学生卒業設計コンクール2019」出展)
福田 暁子  僕らと彼らと、住み繋ぐ

Bコース(研究)
梶濱 次郎  透光性を保持した開口部補強に関する研究
金子 英人  伝え方のスタディ


選評

2018年度の卒業制作Aコース(設計)は、リサーチや技術的検証などの構築的な面と建築や空間の表現が両立した作品が例年に比べて少ない印象であった。しかしながら、検討したことが表現しきれていない面もあり、より丁寧なプレゼンテーションによって大きく発展する作品が多いと感じられた。Bコース(研究)は卒業研究をベースにしながら社会の中でより実用性を持つことを意識した作品が多く、研究と制作との良い連関が生まれている。案をさらに発展する為に、現代の社会状況を詳細にリサーチした上での実用的な展開を期待したい。

Aコース(設計)
寺田亮「Liver of Metropolis – 下水処理場×植物工場」《辰野賞》

下水処理場の各処理過程を従来の水平方向での展開ではなく、垂直方向に高層化する計画である。高層化によってフットプリントが小さくなることで、従来都市空間における巨大な空白エリアとなっていた処理場をより都市生活に近接させることが可能になる。計画では、植物工場やコワーキングスペースを処理場に絡めることによって、下水処理によって発生する熱や素材を植物栽培に再利用し、さらに人々が日常的に利用できる場とすることが提案された。処理過程を高層化するという仮説を設定し、それによって起こる様々な効果を粘り強く探求したことが高く評価された。しかし、建物周辺との関係性や、都市景観にどのようなインパクトを与えるのか、という問いに対する意識の希薄さも指摘された。

内倉 悠 迎合か〈奨励作〉
歌舞伎町を劇場、雑居ビル、大規模商業施設の混成として分析し、列柱空間を加えた4つの類型を融合し、歌舞伎町を象徴する建築を表現した。カテナリーアーチを用いた断面構成により、プログラムが連続的に変化する建築としてまとめあげた構想力・造形力が高く評価された。一方、実際の使われ方や空間体験については、構成の魅力を活かしきれていないという指摘があった。

荒川 実緒子 にじみあう日常〈奨励作〉
都心部にあるアーケード商店街の中に街に開いた障害者支援施設を提案した。閉鎖しがちな施設に対して、活気を失いつつある商店街や周辺の小学校、保育園、公園とプログラムを連携しながら、障害者の日中活動や住まいの場を緻密に検討したことが高く評価された。提案された建築に対しては従来型の計画を越えられておらず、居場所への新しい提案や商店街への積極的な関与のほか、商店街全体が支援施設となる可能性について議論が行われた。

植木 祐地 KICHIJYOJI LIVING〈奨励作〉
近年、複数の路線が乗り入れる駅では、鉄道以外のモビリティも合わせて、よりシームレスな接続が議論されている。吉祥寺駅を対象とし、街路構造やバスとの接続などの具体的な課題を拾い上げ、もし改札がなくなったらという仮説のもとでこれからの駅のあり方を示した意欲的な作品。現代的なテーマ設定と将来性が高く評価された一方で、形態の根拠に疑問が呈され、より詳細なリサーチによる検討を求める指摘があった。

野田早紀子「水路と舟と子どもの島〜史跡・第三台場の再活用計画」〈奨励作〉
東京湾に浮かぶ第三台場の史跡を、水質浄化のインフラと児童施設のコンプレックスとして活用する計画である。江戸時代の台場の建物の遺構の配置や、植栽分布をリサーチし、それをもとに水質浄化のためのフィルターを配した水路を決定、さらに水路に絡めるような形で児童施設の各種プログラムを配置することで全体を設計している。模型・図面のプレゼンテーションや、設計された空間は魅力的であり高く評価されたが、一方で、水質浄化についての定量的な検証が不足していることが指摘された。

福田暁子「僕らと彼らと、住み繋ぐ」〈奨励作〉
福岡市において、留学生や県外から就職する人が増加している状況に着目し、古くから地域に住む住民と新しく住み始めた人々の交流との交流が自然に発生するような集合住宅の計画である。専有部と共有部を垂直に構成し、共有部も上下によってその使われた方を細やかに調整している。細部まで綿密に配慮された設計が評価された。一方、使われ方をどこまで厳密に設計者が規定するべきかについて、審査員の間でも議論が分かれた。

久野遼 雪とともに来る〈奨励作〉
空き家を活用した福祉施設の提案である。高齢化によって空き家が増加している新潟県上越市高田地区を対象に、雪国で見られる雁木づくりなど地域の特色を活かした提案を行っている。講評では、地域の問題についての適格なプログラムであること、3棟をまとめて計画したことで耐震性能を向上させた点について評価された。一方、町屋の新築部分において、町屋の空間構成を現在のライフスタイルなどへ再解釈せず、そのまま踏襲している面が指摘された。

下田悠太 the pop up village〈奨励作〉
折り紙の幾何学を使用した仮設住宅モデルの提案である。折り紙建築においての課題であるジョイントを削ったりせず加工性を高くすること、避難所より快適で既存仮設住宅より早急に対応できることがコンセプトである。講評では、折り紙のアイデアを建築に適用するにあたり、厚みやジョイントの問題をきちんと考えた面が高い評価を得た。反面、仮設住宅の提案においては、被災者の目線で物事を考えた方がより良かったという指摘と、被災者たちが今あるもので、自分たちで作れるように後押しする提案だとさらに良いという意見もあった。

竹中信乃 銭湯、今を生きる。〈奨励作〉
神戸市灘区の木密地域を対象に、既存の住民のための銭湯、新しく転居してきた住民のための児童館、観光客のためのゲストハウスといった3つの機能を持った複合施設の提案である。図面と模型、両方ともユニークなプレゼンテーションであること、また、徹底的な観察と自分の思い出をもって、リアリティのある計画であると評価された。一方、スケッチと模型の表現がほぼ一緒で、表現の幅を広げることによってよりリアリティが出てくる可能性もあるとの指摘もあった。

Bコース(研究)
芝村 朋宏 丸の内探訪《中村達太郎賞》

建物の歴史的情報、地理的情報、ハザードマップ、地下情報など、あらゆるデータベースを3次元空間上に指定した時間軸に応じて表示できるiPad版とPC版のアプリを制作した。卒業制作では丸の内周辺のデータに関するプロトタイプアプリであるが、3次元地理情報とそれに対応するデータさえあればどこでも使えるアプリである。都市開発等のツールとして幅広い応用が期待でき、実用性の高いツール開発を行ったことが評価された。

梶濱 次郎 透光性を保持した開口部補強に関する研究〈奨励作〉
既存木造建築物の開口部補強において耐震性の向上と透光性の保持を両立させることを目的とした木格子とアクリル面材による耐震補強方法の卒業研究をもとに、実際の建物をモデルに、模型による納まりの検討と解析による耐震シミュレーションを行った作品である。提案された耐震補強材は内壁用に作られたものであるが、これを外壁に用いた解析も行っている。築50年の木造住宅の耐震シミュレーションは評価されたが、補強部材と梁との接合部の補強も重要であり、その具体的な方法については直近の課題とされた。

金子 英人 伝え方のスタディ〈奨励作〉
人手不足問題の対策としても建築の生産性の向上が重要であるが、卒業制作では設計情報をどのように施工者に伝えていけばよいか、というノウハウが少ないという点に着目し、「情報伝達フォーマット」を考案した。設計図に従ってレゴブロックを組むという作業を建築生産プロセスのモデルとし、作業者の熟練度、作業内容に応じてどのように情報を伝えれば全体の作業効率が上がるかということを考慮した伝達情報を用いて被験者に作業をさせ、情報伝達フォーマットの有効性を確認した。レゴブロックを用いた独創的なモデル化によって既往研究の課題を克服している点が評価された。


作品リスト 62名
Aコース(設計)

内倉 悠   迎合か/迎合か  奨励作
小野 紘史  LIVEHOUSE IN SHIBUYA
河村 佳萌  シャッター街の自己治癒を促す
鄭 嬋媛   北投温泉公園 〜地下を楽しむ〜
托 日尼   国立ビデオゲームライブラリー
浅川 雄基  絡み合い、そして繋がる
荒川 実緒子 にじみあう日常  奨励作
淡路 広喜  転生都市 もう一つのシブヤ
井上 泰佑  ケンチク体 フォントの建築化
井ノ本 快  まちなかの連携
植木 祐地  KICHIJYOJI LIVING  奨励作
大場 卓   BATH MOSQUE
大平 豪士  街に根(ルート)を張る駅
岡部 真子  いきる道
加藤 名音  音と光が交わる場
金澤 亮磨  Koishikawa Botanical Center
北村 和紀  東京大学駒場スポーツ研究センター
久野 遼   雪と共に来たる  奨励作
呉 南崎   商業にすまう屋台
後藤 啓太  HUB KAWAGUCHI オフィスの向こう側
近藤 雅貴  KOMABA SPORTS PLAZA
下田 悠太  the pop up village -一台のトラックに積み込める建築群-  奨励作
新山 雅人  再開発とまちの狭間―まちと商店街の継承
鈴木 智統  幼い街のための集合住宅
鈴木 博恵  金刀比羅戯場國
高田 夏輝  明日の都市農地
田窪 淑子  土の小学校 版築体育館
竹中 信乃  銭湯、今を生きる。  奨励作
田中 悠太  shimokitazawa connection line
寺田 亮   LIVER of Metropolis -下水処理場×植物工場-  辰野賞
藤後 順己  PIXEL – 物流倉庫における単位空間の生成と構築 –
中岡 桃子  ヒロシマtoひろしま
中垣 健   yoko(skate)park
永渕 飛鳥  Silo Park
成瀬 皓太  The Future Commercial City
野上 宏樹  まちの棚 道路拡幅の、その先へ
能島 有亜  みなとに臨む船型喫茶店
野田 早紀子 水路と舟と子どもの島〜史跡・第三台場の再活用計画〜  奨励作
羽佐田 紘之 Connected Road-Side
早川 知里  鎌倉近代美術館拡張計画
平田 隆太朗 東京大学駒場キャンパス多目的ホール建替計画
福田 暁子  僕らと彼らと、住み繋ぐ  奨励作
古川 理佳子 もう一つの顔 〜災害に備える地域拠点〜
間崎 紀稀  Whose City Is It?
間渕 文楓  platform to home
宮崎 瑠菜  Eコマースをあるく
三輪 春奈  UENO Community High School
武藤 宝   Drive for the local
山原 大歩  Green Hub Tokyo
山本 慎   競争しあい進化する緑
渡邊 千加  太陽と暮らす

Bコース(研究)
永野 弘晃  比重分級されたシラスを用いたモルタルのフロー値の分析
上原 徹   人間の地震応答解析モデルを用いた室内空間の負傷可能性評価
大森 寛人  多成分粉粒体充填率シミュレーションシステムの構築と考察
小栗 宏介  建築構造情報の伝達手法の開発
梶濱 次郎  透光性を保持した開口部補強に関する研究  奨励作
金子 英人  伝え方のスタディ  奨励作
楠元 宏治  コンクリート用混和材
齊藤 響   貫継手の寸法と構法の研究
芝村 朋宏  丸の内探訪 -インタラクティブな三次元空間における街の歴史・データの可視化-  中村達太郎賞
藤木 龍三  端材ゼロ
連 惇    ディープラーニングを用いた監視カメラによる火災検出