University of Tokyo - Department of Architecture

2017年度 卒業制作

辰野賞

楊 光耀   復刻都市
 (日本建築家協会関東甲信越支部「第27回 東京都学生卒業設計コンクール2018」金賞 受賞!)

両川 厚輝  チャマンガで小屋を建てる
 (日本建築学会「全国大学・高専卒業設計展示会」出展, 三大学合同講評会 川添善行賞/那須聖賞 受賞!)

中村達太郎賞

小日向 柚香 旧祥雲寺客殿及び智積院障壁画の復元

奨励作

Aコース(設計)
吉田 聖   さりげない日常を共に生きる
内海 皓平  合同会社 藍染計画の三十年
向後 美穂  ハザマ

 (日本建築家協会関東甲信越支部「第27回 東京都学生卒業設計コンクール2018」奨励賞 受賞!)
谷繁 玲央  住宅構法の詩学 The Poetics of Construction for industrialized houses made in 1970s
 (レモン画翆「第41回 学生設計優秀作品展」レモン賞/佐藤光彦賞, 三大学合同講評会出展 グランプリ 受賞!,
  卒業設計日本一決定戦 日本三)
長根 乃愛  ニュータウンで、生きる
 (近代建築社「卒業制作2018」出展)
八木 尚太朗 第二食堂展開計画
和田 亮佑  PALINGENESIS 転生する建築
砂田 頼佳  移療島

 (三大学合同講評会 金田充弘賞/塚本由晴賞/中山英之賞 受賞!)

Bコース(研究)
佐伯 渉   阿蘇神社の楼門模型復元
尾島 慧亮  簡易放射パネルの制作及び模型による温熱環境比較実験


選評

2017年度の卒業制作は、例年に比べて全体的に完成度が高く、またテーマも多岐にわたっていた。Aコースでは、辰野賞に選ばれた2作品の取り組みは一見対照的であるが、それぞれテーマを深く掘り下げ、極めて高いレベルの提案に昇華させていた。Bコースは、卒業研究で扱ったテーマを制作という形式によって如何に掘り下げることができるかを追究していた。完成度の高さ一方で、提案の持つ強度や新しさについての物足りなさを指摘する声も上がった。

Aコース(設計)
楊光耀 復刻都市《辰野賞》

高速道路建設が予定されている世田谷区のジャンクションを敷地に、実際に発掘された奈良時代の遺跡の保存と高速道路の建設を共存させるための提案を行った力作である。地中の履歴を含め、壮大なスケールを捉えている点、遺跡を社会に積極的に発信する新しい遺跡保存の手法を提示している点が高く評価された。一方で、周辺地域や高速道路の計画そのものへのアプローチに到達していない点が指摘された他、遺跡全体の広がり、遺跡の壮大な時間スケールに対する提案作品の時間軸の切迫さなどについて議論が行われた。

両川厚輝 チャマンガで小屋を建てる《辰野賞》
2016年エクアドル地震により被災した沿岸漁村チャマンガにおいて、内陸部の再定住先の家を残しながら、居住が禁止された沿岸部に漁業、休憩、スモールビジネスなどのための小屋を建設することで生活圏を拡大することを示した意欲作である。世界の被災地で課題となっている低平部の利用に対して、リアリティと説得力のある提案を行っている点が高く評価された。一方、外部者(建築家)が関わることによって生まれる新しい小屋のあり方、新たなミンガ(現地の文化で地域住民協働の建設作業)の仕組みを提示することについて課題が示された。

吉田聖 さりげない日常を共に生きる《奨励作》
都営住宅、高齢者施設に隣接し、また近隣に小学校や大学病院の移転が予定されている足立区の敷地とし、障害児施設の地域における共生をテーマとした作品である。卒業研究から継続した厚みと説得力のあるリサーチと課題設定が評価された他、敷地選定の秀逸さ、800mm上がった敷地へのアプローチや、繊細なプランニングが評価された。町とつながることによるセキュリティの観点について議論が行われた他、身体の違いを捉えたファニチャーデザインにまで発展する可能性について指摘された。

内海皓平 合同会社 藍染計画の三十年《奨励作》
周囲の開発から取り残された文京区根津二丁目藍染町を敷地とし、合同会社を設立しエリアマネジメントの仕組みを構築することで、町の構成を維持しながら居住環境を更新・改善していく手法を提示した作品である。合同会社を立ち上げた点、またその役割の設定が高く評価された。さらに、スタジオ課題、卒業研究と同地域に深く、継続的に関わった取り組み、家族構成や、建物形態ごとに異なる住宅の更新の手法まできめ細かく検討されている点も評価された。

向後美穂 ハザマ《奨励作》
渋谷、表参道、国連大学などの「ハザマ」を敷地とし、隣接する首都災害医療センター(計画)の付属施設を提案した。敷地内の琵琶池や、繊細な光や水の反射を生み出す建築の姿とマッチしたモネの絵画をコラージュしたドローイングが高く評価された。また構造デザインを全面に押し出し、空間の美しさに迫った作品である点も評価された。構造デザインの観点からさらなる可能性が示された他、宿泊室など小さなスケールの空間も作りこむことで、より作品の魅力が表現できるのではと指摘された。

谷繁玲央 住宅構法の詩学
     The Poetics of Construction for industrialized houses made in 1970s《奨励作》

1970年前後に形成された住宅地における工業化住宅を対象とし、開発した各社で閉じられた住宅のシステムを開放するため、構法あるいは物と物との関係を捉え直し、大量生産された住宅を解体・再編しながら使い続けていく提案で、これまでにないテーマ設定が高く評価された。時間を含めたマテリアルや、耐震基準に関係する構造面での展開、より再編を加速させた住宅地の全体像について議論が行われ、既存のシステムの読み替えについて可能性の高さを感じさせる作品である。

長根乃愛 ニュータウンで、生きる《奨励作》
多摩ニュータウンを敷地とし、郊外における人口減少の問題に対して、造成の際に生まれた住宅地と交通を分断する法面に着目し、コンテナモジュールの建築によってそれらをつなぐ交通拠点を提案し、時間軸に沿った移築と集積によって人口の変化に合わせたニュータウンでの生活像を描き出す力作である。コンテナモジュールのフレームを用いた構法と斜面地との関係に対して疑問が呈されたが、公共交通やモビリティに着目し、サイトスペシフィックでありながら他のニュータウンにも展開可能な構想力が高く評価された。

八木尚太朗 第二食堂展開計画《奨励作》
第二食堂は東京大学本郷キャンパス内で軸線の交わる重要な位置にあり、食堂・生協といった学生生活をサポートする機能だけでなく、部室が集まり学生活動の拠点となっている。近接する東京大学浅野キャンパスとの連携といった発見的な視点を持ちながら、実際に部室として使用する学生との対話の積み上げによって設計を行い、リアリティのある提案であることが高く評価された。一方で、耐震補強への構造的な提案や、外部とつながる重要な位置にあることから公共性を担う建築の可能性について指摘された。

和田亮佑 PALINGENESIS 転生する建築《奨励作》
兵庫県佐用町にある旧保育園を活用しコオロギを餌や昆虫食として利用するベンチャー企業に着目し、外部から来る企業と地域や建築のあり方をテーマとして、起りうる未来を多角的に想定しながら、使われ方を含めフェーズごとに建物が変化する時間軸を意識した力作である。手法として地下を掘ることと屋根を架けることに対して空間的な追求の可能性が指摘されたものの、企業が出た後も地域の人の為の場所として利用できるようにする点など、地域に対する提案の奥行きと完成度の高さが高く評価された。

砂田頼佳 移療島《奨励作》
石油の掘削装置であるオイルリグのうち、脚を使って自立するタイプのものが性能的な制約から不要になってきている。日本に12機あるこのオイルリグを対象とし、災害時に港が破壊されるなど孤立した地域での広域搬送拠点として、平常時には離島のためのドクターヘリの拠点として活用し、産業遺産になりつつあるオイルリグを医療の文脈につなげて再利用する意欲作である。オイルリグの形態的な特徴に比べて建築のデザインでの提案の物足りなさが指摘されたものの、独自の着眼点と全体としてのストーリーの完成度が高く評価された。

Bコース(研究)
小日向柚香 旧祥雲寺客殿及び智積院障壁画の復元《中村達太郎賞》

江戸時代に焼失した祥雲寺客殿及び客殿内の障壁画(京都智積院に現存)の配置を縮小立体模型によって復元した作品である。1/50で制作された模型には障壁画が飾られた室内(2列3室の6室)が分かるように、柱・壁など天井から下の部分が復元され、その中に現存する障壁画が
配置され、当時の様相が追体験できるような構成となっている。
既往の研究と異なり、発掘調査による遺構と合致し構造的に成立するような建築的アプローチ、
障壁画の関係性を尊重した美術的アプローチの両側面から整合性が取れた復元案を提案した点が評価された。

佐伯歩 阿蘇神社の楼門復元模型《奨励作》
2016年熊本地震によって倒壊した阿蘇神社楼門を模型で復原した作品である。1/30縮尺模型は、シャープさと精度を追及するために檜で作成され、主要な柱・梁・小屋組及び8~59個の斗や肘木からなる組み物が精巧に表現されている点が評価された。部材のおおまかな寸法等は倒壊前に作成された阿蘇神社建造物調査報告書の記載情報及び図面の実測から決定されたが、1階柱位置と2階柱位置の関係性については情報が不足していたために工夫がされた。今後、修理工事(再建)される楼門との比較による模型の再現精度の検証が次の課題として挙げられた。」

尾島慧亮 簡易放射パネルの制作及び模型による温熱環境比較実験《奨励作》
放射パネルの新な設計手法提案に向けて、放射パネルの特性を把握するための縮小模型実験を行った作品である。20mm厚のスタイロフォームで一辺およそ30cmの直方体空間を作成し、アルミニウム配管に温水を流した放射パネルを中に設置し、放射パネルの設置位置(天井、床)、パネル材質、パネル開口率などがパラメータとされた上で,熱電対によって空間内の室温の計測が行われた.放射パネルの性質を把握するために実験を行った点が評価されたが、縮小模型実験によるスケール効果、室温より適切な温熱環境の評価指標の選択、シミュレーション結果との対応などが今後の課題として挙げられた。


作品リスト 61名

Aコース(設計)
石橋 尭之  AKIBA TENT
久家 範之  内/外の流動 ー偶然の接続を求めて
中塚 絢太  生きがい探しを通した地域ケア
蛭田 龍之介 四重奏の家
楊 光耀   復刻都市  辰野賞
両川 厚輝  チャマンガで小屋を建てる  辰野賞
吉田 聖   さりげない日常を共に生きる  奨励作
芦立 雄太郎 Sharing Circulation Yokohama
安宅 泰穂  新月面基地構想
石田 康平  とけあう空間
井関 瑞生  On The Rear Wheels Of The Metropolis
今田 多映  防潮堤神社
内海 皓平  合同会社 藍染計画の三十年  奨励作
榎窪 研太  区民センター再構築〜田端区民センター建て替え計画〜
神代 翔子  onagigawa riverside center
木村 太亮  out of frame -写真構図から見る空間の再興
向後 美穂  ハザマ  奨励作
澁江 耕介  浜松町再編
高岡 俊一郎 アメ横刑務館
高原 柚   靴を脱いで -祈りとまどろみの隙間-
谷繁 玲央  住宅構法の詩学 The Poetics of Construction for industrialized houses made in 1970s 奨励作
田主 望   Tower of Babel
中川 隼也  都市の衣替え
中西 亮介  直線状のヘテロトピア、或いは新しい都市の軸線
長根 乃愛  ニュータウンで、生きる  奨励作
二上 和也  記憶の暴走と都市の裏のバザール
藤生 貴子  追憶の街
藤本 月穂  A GLASS of SMOOTHIE
冨士本 学  水の戯れ 湖から現れる、舞踊のための祝祭劇場
堀 誠    路地×公衆無線LAN
松本 栞   原宿カテーテル計画
松本 大知  トイレが変われば街が変わる 〜 新宿中央公園 〜
三浦 玲児  再生する山岳寮
溝口 暉人  文化の波止場-Art Station in Yokohama-
宮武 哲也  Waste to Resource 私たちの手で
宮本 健太  Shape of Stone
宮森 秀志  都市で寄り道するー豊洲の子どもたちの通学体験を豊かにするー
本村 彬   農地を拓く、団地を開く。
森本 直哉  ASAGAI MUSEUM の これから
師田 侑一郎 創意の学び舎
八木 尚太朗 第二食堂展開計画  奨励作
山崎 要   出会いと発見の富山空港
山田 航輝  賑と閑の路
横山 由佳  異界の器
吉岡 七海  縮小する百貨店の裏口を考える
吉野 良祐  岩井町三五四序論
和田 亮佑  PALINGENESIS 転生する建築  奨励作
砂田 頼佳  移療島  奨励作
佐山 遥   駅前マンション

Bコース(研究)
大霜 潤也  曲線で模様づけられたステンドグラス構造体
佐伯 渉   阿蘇神社の楼門模型復元  奨励作
高倉 光   PatchMaps
福田 知広  MAJS System
有本 清香  Toilet×IoTの可能性
大音 裕紀  都市環境負荷長期予測モデルの立体的な可視化
尾島 慧亮  簡易放射パネルの制作及び模型による温熱環境比較実験  奨励作
小日向 柚香 旧祥雲寺客殿及び智積院障壁画の復元  中村達太郎賞
谷口 耀   東京都港区における神社を対象とした容積移転に関する研究
常山 葵   ノンダイアフラム円形鋼管柱パネルの耐力・剛性の評価
吉田 優一朗 MATLABを用いた鉄筋コンクリートひび割れの画像解析
西川 泰海  建築における機械学習による画像認識の応用とアプリケーションの提案