Department of Architecture – The University of Tokyo

水圧を利用した材料の破壊試験装置

この装置は、材料(写真は木材)の円孔にゴム風船(バルーン)を挿入して密閉し、送水ポンプからパイプと注水ブロックを通してバルーン内部に注水し、円孔内に水圧を加えることによって、材料を破壊させ、材料の破壊強度を測定するものである。低流速でゆっくり注水することにより、円孔内部は静水圧状態となる。伸縮自在のバルーンは高圧下で円孔壁にぴったり張り付く。パスカルの原理により円孔壁には一様な圧力が作用する。バルーンは柔軟であるので円孔壁には摩擦力が働かない。ちなみに、木材が破壊するときの圧力は5MPa程度となり、これは水深500mの水圧に相当する。

これは摩擦を介在させないで材料の破壊強度を調べる実験装置である。通常の材料強度試験では、加力部と試料の間に不可避の摩擦が生じ、材料の正しい強度が得られない。この方法だと摩擦がゼロとなるので、材料固有の精確な強度が得られる。例えば、等方材料の場合には、円孔縁に働く引張応力が水圧pと等しいので、破壊時の水圧が分かれば、それが直ちに材料の破壊強度となる。木材のような直交異方材料の場合は少し面倒だが、次の方程式を解くことによって円孔縁の応力が得られるので、破壊時の水圧pから破壊強度を知ることができる。

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この試験方法は、摩擦の影響を排除した材料固有の破壊強度を知ることができる利点のほかに、次のことが期待される。(1)破壊するときの内圧は板厚の影響を受けないので、厚い板でも同じ能力の送液ポンプで実験が可能である(現有装置では内圧20MPaすなわち水深2000mの水圧まで可能)。(2)可搬式の装置に改良すれば、大形部材の現地実験も可能である。(3)木材のみならず、複合材料やコンクリートなどの破壊実験にも適用できる。(4)バルーンは柔軟であるので、アタッチメントを替えれば円形以外の孔にも適用できる。(5)バルーンを外せば水が浸透する状態での破壊強度を知ることができ、水中構造物などにも応用できる。
なお、理屈上、水ではなく空気を使うことが考えられるが、非常に危険であるので、気体を圧入するのは止めたほうがよい。水は非圧縮性のため、バルーンが破れても爆発することはなく、いたって安全である。