Department of Architecture – The University of Tokyo

DFL Pavilion 2013 “99 Failures”

本研究は、自由曲面のテンセグリティ構造を2次元からの立体化により安定化させる構法のケーススタディとして、2012年10月から2013年12月までに東京大学大学院建築学専攻小渕祐介研究室(以下、小渕研)、同佐藤淳研究室(以下、佐藤研)と株式会社大林組(以下、大林)との協働にて仮設パビリオンの設計、プロトタイプ製作を行い、その成果をまとめたものである。部材加工・制作にはAnS Studio・竹中司氏の協力を得た。本研究のケーススタディにおいては、パビリオンの設計及び施工検討にあたって導入された諸情報技術によりもたらされる1.設計プロセス 2.施工方法 3.建築構造のそれぞれにおける革新性という観点から、本研究の成果と付随する問題点を検証し、その発展可能性を考察した。

背景および目的

20世紀初頭以来、現在に至るまで国際的な枠組みの中で確立されてきた近現代の建築生産システムは、2次元の図面の組み合わせによる指示を基本とする、直行系の座標を持ったモジュールに従い確立されてきた。
一方で、フライ・オットーが1982年の自著の中で「今日の目標は自然な建物と都市をつくることである―中略―人間とその技術が自然と不可分であるような状態を作り上げることである」と述べていることに顕著だが、自然の持つ合理性を取り込むことを目的とした3次元的な曲線・曲面を基調とした有機的な建築への取り組みは、1960年代以降徐々にその例を増やし、現代では90年代後半以降の情報技術の飛躍的革新の支えを得て、一定量の事例を蓄積するに至っている。

しかしながら、3次元的な曲面を構成する建築部材の生産システム及びその施工過程は、依然として非常に煩雑な生産過程や大量の仮設資材を必要とするケースや、膨大な図面による建築形状の指示に基づく職人の手作業等を必要とするケースも多く、特に経済的な観点から十分に合理的な生産過程や構法の確立には至っていないのが現状と言える。

本研究では、これらの問題意識に基づき、従来の建築生産システムにおける技術体系で十分に対応可能な2次元の情報で部材形状を定義し、かつ組み上げまでを平面上で行うことで煩雑な生産や仮設構造を回避しながら、簡易な施工過程のみにより3次元形状を生み出し、成果物としては有機的な曲面のもつ合理性を獲得することを目的とした。