加藤 耕一
私たちは、西洋を中心とする建築の歴史を研究する研究室です。建築史研究は、知的刺激に満ちあふれた学問であり、建築の魅力を解き明かす重要な分野であると、私たちは考えています。
歴史上の魅力溢れる建築の数々を真摯な姿勢で研究することが、ひいては現代建築、さらには未来の建築を解き明かす建築理論を構築することにつながると、私たちは考えています。加藤研究室では、たとえば以下のような観点から建築史の研究をおこなっています。
建築時間論
建築を竣工年代によってカタログ化(点の建築史)するのではなく、建築が時間の変遷とともにどのような変化を遂げていったのか(線の建築史)という点に着目する。「建築」:「建築家」:「竣工年」を一対一対応させがちな、近代的建築観からの脱却。
ex. 「 時間のなかの建築──再利用から生じる歴史の重層性」
(シンポジウム資料「時間のなかの建築」所収)
ex. 『 時がつくる建築:リノベーションの西洋建築史』
(東大出版会、2017年)
ex. 「建築時間論──近代の500年、マテリアルの5億年」
(10+1 WEBSITE「特集 時間のなかの建築、時間がつくる建築」2017年6月)
構築と空間
構法・材料・構造といった具体的なモノとしての建築に着目しながら、単なる技術論にとどまるのではなく、空間論、建築理論まで発展させる研究方法として。フランプトンの『テクトニック・カルチャー』以降の建築史学のあり方。
ex. 「構築術的空間論としてのゴシック建築研究」
(『ゴシック様式成立史論』序章)
ex. 「特集 歴史観なき現代建築に未来はない」
(インタビュー)(『GA JAPAN』124、所収)
近代建築史学の再考
21世紀の現在、20世紀における建築学の常識が、多くの場面で常識として通用しなくなり、建築の現場ではさまざまな新しい試みが登場している。建築史学の分野が成すべきは、近代的建築観を一歩引いた視点から歴史的に位置付け直すことだろう。
ex. 『近代建築理論全史 1673-1968』ハリー・フランシス・マルグレイヴ 著、加藤 耕一監訳、丸善出版、2016年
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