建築学科の特色
建築学の扱う範囲は極めて広く,社会とのかかわり合いも密接である。民族の遺産である古建築および集落の保存や復元,現代都市の象徴である超高層建築の開発,生活基盤となる住宅の生産や維持保全,我々の生活を脅やかす地震・火災・台風等に対する安全性の確保,快適な生活条件をつくるための冷暖房設備等の開発,そして都市の建設や再開発など,建築学は,人類が生活を営む上で欠くことのできない衣,食,住のうちの一つを分担している。建築学は,いうまでもなく建築をつくるために必要なあらゆる問題をとらえて研究する学問である。したがって,工学部に属しているが,人間生活を容れるものであるという意味で,技術的な問題の他に,社会的,経済的,心理的問題が取り扱われ,造形的,芸術的分野をも含んでいる。
すぐれた建築を完成するためには,すぐれた材料,技術,芸術的技能が必要であって,そのための研究が行われる。しかし,それらの単なる寄せ集めだけで,すぐれた建築ができるわけではない。そこで,建築学の中には,これら多くの分野をいかに総合するかという問題が含まれるのである。海外の建築界では,技術の開発・応用や材料の選択等を仕事とするエンジニアの職能と,造形を主として建築の総合を仕事とするアーキテクトの職能とが分かれ,教育課程も二分されている例が多いのであるが,わが国の場合はその両者が一体となっているのが大きな特徴である。