University of Tokyo – Department of Architecture

2021 Graduation Production

辰野賞

山本 実南   Mosaic Field
 「三大学合同講評会」金田充弘賞・オーディエンス賞 受賞
 「全国大学・高専卒業設計展示会」日本建築学会 出展

中村達太郎賞

九冨 恵一   廃瓦を用いた3Dプリンティング用モルタルによる印刷体の製作
佐伯 直彦   Mars Basement 2030 Magnesium Carbonate Concreteを用いた火星有人探査拠点の設計
割鞘 奏太   ajisai
 

奨励作

Aコース(設計)
小川 真穂   池尻三宿プロムナード計画 -まち的学校、学校的まち-

 「三大学合同講評会」出展
 「第45回 学生設計優秀作品展」レモン画翆 出展
梶村 寛    団地を編み直す
建道 佳一郎  snow architecture
佐竹 良太   谷中路地再考 公開路地のある住宅地
藤堂 真也   メディア・アーキテクチャー 流動浮遊の演出空間
 
 「三大学合同講評会」出展
 「第31回JIA東京都学生卒業設計コンクール2022」日本建築家協会関東甲信越支部 出展
富所 貴大   生きた「あと」がのこるまち -下水処理×水火葬- 
 「第31回JIA東京都学生卒業設計コンクール2022」日本建築家協会関東甲信越支部 銀賞受賞!!
 「JIA全国学生卒業設計コンクール」出展
野澤 文珠香  線路の上のロジスティクス -物流をまちに開く- 
 「卒業制作2022」近代建築社 出展
藤城 礼    山と海の間で捧げる祈りの場-Reconsidering the landscape of fishing villages
山中 碧唯   酪農公園
 

Bコース(研究)
八木 健悟 空気椅子の近似 Lattice^n骨組を用いた椅子の設計


選評

 昨年度に引き続きコロナ禍で作業環境が制限され厳しい状況であったものの、力作が大変多かった。社会状況を丁寧に読み取り当事者として設定した説得力のあるテーマが多く、2年に渡りコロナ禍のなかで学んできた成果が感じられた。一方、特にAコースでは、問題解決型で想像の範囲内の提案が多いことが気にかかる。受賞作においても建築には物足りなさが指摘され、「建築」の概念を広く捉えるならば賞に値するという留保付きであった。予定調和ではなく卒業制作後も継続して取り組むくらいの課題に挑戦してもらいたい。Bコースは昨年に引き続き制作物が高い完成度で表現された作品が多く、研究と制作が良い連関で行われている。今後は物理的な制作物だけでなく、プログラム・アプリケーションでも完成度が高い作品が期待される。また、分野外からは評価が難しいという声も聞かれたため、専門的な内容を非専門家に向けてわかりやすく説明できるプレゼンテーション能力にも磨きをかけてほしい。

Aコース(設計)

山本 実南 Mosaic Field 《辰野賞》
 近年関心が高まっている都市農地の課題に対して、宅地と農地の境界に軽量なユニットを設置し厚みのある境界とすることで、郊外住宅地における農住混在のあり方を提案した作品である。時間軸に沿って、詳細なリサーチに基づいた緻密な計画がされている点が高く評価された。一方で、使われ方に対するユニットの構造や、土地所有のあり方を含め地域住民が農地に関わっていく仕組みづくりについてはさらなる検討が期待される。

小川 真穂 池尻三宿プロムナード計画-まち的学校、学校的まち〈奨励作〉
 コミュニティーが希薄な都市部において、公立小中学校と民間主体の産学官連携施設である「まちオフィス」の一体的な計画を提案した。学校を地域の中の公共的な空間として位置づけて行くという面、地域の物理的な構造を良く反映したリニアな公共空間を提案したことが高く評価された。反面、デザインでの重要なポイントである中央部の通り抜けにおいては、より地域に溶け込むような素材やデザインにした方が良かったというコメントもあった。

梶村 寛 団地を編み直す〈奨励作〉
 築50年を迎える共同住宅団地を対象に、団地内の空間を再構築し、次の世代へ受け継ぐ手法を模索した提案である。予想される団地の課題をアクティビティ別に整理し、解決策を体系的に提示したことが評価された。講評では、デザインにおいてはグラウンドレベルを編みなおすために用いた曲面構造壁に頼りすぎたこと、またそれを団地全体に適用するにあたり、デザイン的考慮が足りなかったのではとの指摘もあった。

建道 佳一郎 snow architecture〈奨励作〉
 新潟県の宿場町を対象に、住民の除雪負担の軽減と地域産業への貢献のため、高架下を用いた除雪及び環境装置(雪の冷気を日本酒貯蔵庫、宿泊施設で利用)として活用を提案した。講評では、今までは住民において負担となってきた地域の自然環境を利活用し、地域に役に立つものとして活用するというテーマ設定はとても面白いとの評価があった反面、高架下に設計した建築デザインが雪国ではなくても成り立つ建築物で、雪に着目したからこそできる建築デザインができたらさらに良い提案になったかとの指摘もあった。
佐竹 良太 谷中路地再考 公開路地のある住宅地〈奨励作〉
都心の密集住宅地の課題となる防災性を向上させるため、総合設計制度における公開空地を住宅レベルの小規模な建築に当てはめる公開路地を提案し、提案をもとに路地の生成とその使われ方、集合住宅の建設をシミュレーションとして設計した作品である。公開路地という新しい概念を作り出したことが面白いと評価された反面、建築的な操作による新しい空間の創出についても提案としてまとめられたらより良かったとの意見もあった。

藤堂 真也 メディア・アーキテクチャー 流動浮遊の演出空間〈奨励作〉
 現代における膨大な情報コンテンツの生成と消費を背景に、「ターミナル・デパート」に代わり、新たな建築空間である「メディア・アーキテクチャー」を提案した。建築の空間・あり方自体に正面から向き合った新鮮なアプローチについて高い評価を得た一方で、物の配置が変わるだけでは従来の百貨店との違いが明確に見えず、物の購入だけではない多様な消費活動が体験できる空間にしたらより良かったとのコメントもあった。

富所 貴大 生きた「あと」がのこるまち ー下水処理×水火葬ー〈奨励作〉
 遺体を溶かして葬送する水火葬場と下水処理を重ね合わせた人工湿地のランドスケープを一体的に計画した作品である。現代社会では公共サービス化し私たちの生活から隠してきた下水処理と葬送に対して、廃校となった小学校を中心に手の届く生活範囲で循環する姿を描き出し、建築とランドスケープそしてインフラを領域横断的に問い直した点が高く評価された。一方で、近しい者を弔う場としては、新しい葬送方法に応じた建築とランドスケープ表現にさらなる展開が期待される。

野澤 文珠香 線路の上のロジスティクス -物流をまちに開く-〈奨励作〉
 広大な敷地が街を分断している三鷹車両センターに対し、貨客混載の鉄道を引き込む物流施設を地域住民に開かれた公共空間として提案した。インフラによる街の分断という一般的課題に、従来型の再開発やインフラの隠ぺいを行わず、電車の流れを残しながら人や物の流れを統合的にデザインした点が高く評価された。CFDによる風の流れが見える屋根架構や、隣接する車両倉庫の活用、電車や線路がより近く感じられる空間構成など、流動を取込んだ計画の発展について議論された。

山中 碧唯 酪農公園〈奨励作〉
 都心の住宅地に隣接する過去に大学附属の酪農場であった公園において、公園を残しながら再び酪農を行うことで地域生活と共にある都市型酪農のあり方を提案した作品である。公園管理を見据えながら、人と牛との関係を丁寧に考察しランドスケープに反映している点が高く評価された。今後の発展として、人ではなく牛が主役となる関係性や機械設備に頼らない共存関係、あるいは物質循環における公園と酪農の関係から導かれる建築とランドスケープに期待が寄せられた。

藤城 礼 山と海の間で捧げる祈りの場-Reconsidering the landscape of fishing villages〈奨励作〉
 漁業の衰退という課題を抱えるなか2019年の台風で甚大な被害を受けた房総半島南端の布良において、房総半島で継承されてきた防風生垣を用いて集落の風景を再構成しながら、海洋散骨後に弔うための施設を集落内に提案した作品である。コンテクストの精緻な読み取りによって、一連の計画が地域に寄り添い説得力がある点が高く評価された。一方で、弔いの場としての集落全体の将来像や生垣の空間性を活かした建築表現については今後の展開が期待された。

Bコース(研究)
佐伯 直彦 Mars Basement 2030 Magnesium Carbonate Concreteを用いた火星有人探査拠点の設計
                                             《中村達太郎賞》

 火星上での有人探査拠点の設計に挑んだ作品である。火星における地質的・惑星科学的な知見の把握を行い,現地で取得できる成分のみで製造できる材料を考案し,建築に期待される各種要求性能として、必要な大気圧と重力のバランス、50度の温度差による熱膨張に対するジョイントの工夫など施工・構造についても検討を行った点が高く評価された。型枠に限らない鉄筋補強方式に向けた検討にも期待が寄せられた。


九冨 恵一 廃瓦を用いた3Dプリンティング用モルタルによる印刷体の製作《中村達太郎賞》

 産業廃棄物となってしまう廃瓦を、その特性を活かして再利用し、3Dプリンタにより建築物として構築することを目指した作品であり、環境に配慮した建築を目指している点、自ら施工技術を実現している点が評価された。今後の展開・応用として、積層体の強度試験を実施することにより、使い道や形状に具体性を持たせること、また、建築スケールへの適用、強度(=耐久性)の差を生かした風合いのデザインなどに高い期待が寄せられた。

割鞘 奏太 ajisai《中村達太郎賞》

 Auxetic Structureと呼ばれる負のポアソン比を持つ面の性質を応用して2方向開閉可能な曲面のタイリング形状(キネマティック・タイリング)を考案し、タイルに厚みを持たせるように発展させて実構造物に応用した作品である。タイル同士の接合方法の提案、小型模型や大型モックアップの製作を通して、理論的な幾何学を実際的な構築物として再現することに伴う難題を解決した点に加え、風景の中にあるモノとしての新しさも高く評価された。一方で、開閉時の連動性や架構の自立性を高めることが課題として挙げられた。

八木 健悟 空気椅子の近似 Lattice^n骨組を用いた椅子の設計〈奨励作〉

構造骨組のLattice化を多段階で施すことで曲げ剛性を保ったまま重量を減らすことができるLattice^n骨組の仕組みを椅子に応用した作品である。1.4mm幅の細やかなLatticeの製作を、デジタル・ファブリケーションを駆使して実現し、実際に座ることで強度を実証できたことが大きな成果と認められた。今後の展開として、曲線的な形状や立体トラス化に向けた設計・製作方法の開発に期待が寄せられた。


作品リスト 61名
Aコース(設計)
44名
齊藤 俊希  建築と都市のあいだに暮らす
石田 肇   王子本町と飛鳥山―石神井川の分断を接続に
板垣 大稀  アメノウズメ the Concert Hall for Game Music
嶋﨑 駿介  TOKYO STADIUM 〜街に溶け込むスタジアム〜
東野 真人  反転都市
山本 隼也  公園に佇む倉庫
阿部 公平  なべて構えとなれり ~小田原における新交通システムの整備~
石井 元啓  霊峰を目指して
伊藤 光   居場所の杜
稲垣 悠太  避難所と仮設住宅を内包した公共施設
伊室 武   テラスがつなぐ持続可能な団地
妹背 伊織  アタミ己堂
大澤 夏帆  Chitchat Office
大田 楓   私とみんなの持続可能な付き合い方
小川 真穂  池尻三宿プロムナード計画-まち的学校、学校的まち- 奨励作
小野 太樹  ハコモノ・パーク
梶村 寛   団地を編み直す 奨励作
辛川 槙之介 人々「を」観せる映画館
柄澤 直哉  工事に導かれるリノベーション
熊野 圭吾  海と共に生きる
建道 佳一郎 snow architecture 奨励作
佐竹 良太  谷中路地再考 公開路地のある住宅地 奨励作
佐橋 慶祐  持続可能な学園団地へー川の分断を解いて
鈴木 諒   Metamorphosis
高見澤 勇太 自作最小限住宅
俵 健太郎  まちの自律更新を支える学生寮
中馬 百合子 寄り道して 一息
堤 淳也   遊学社会と山林寺院
露木 百音  竹をつぐ、竹でつなぐ。
傳田 幸正  築地養殖計画
藤堂 真也  メディア・アーキテクチャー 流動浮遊の演出空間 奨励作
富所 貴大  生きた「あと」がのこるまち ー下水処理×水火葬ー 奨励作
長野 歌穂  寄り添う家
二本柳 俊介 箱 開いて拡がる温泉街
野口 雄人  都庁をひらく -逃げる市長 追う市民-
野澤 文珠香 線路の上のロジスティクス -物流をまちに開く- 奨励作
萩原 諒   音に触れるコンサートホール
馬場 雄大  狭間の住処
藤城 礼   山と海の間で捧げる祈りの場-Reconsidering the landscape of fishing villages  奨励作
森 一真   識即是空,空即是識
山崎 友暉  山車にまつわる建築
山下 翔太郎 日本橋 Over The Bridge
山中 碧唯  酪農公園 奨励作
山本 実南  Mosaic Field 辰野賞

Bコース(研究)17名
高田 悠史  長周期地震動シミュレータの制作
山田 涼太  無線加速度センサーを利用した建物異常検知アプリケーションの作成
秋光 大地  最適構造物の自動設計プログラムの制作
九冨 恵一  廃瓦を用いた3Dプリンティング用モルタルによる印刷体の製作 中村達太郎賞
佐伯 直彦  Mars Basement 2030 Magnesium Carbonate Concreteを用いた
       火星有人探査拠点の設計 中村達太郎賞
佐々木 優  敵対的生成ネットワークによる建物時刻歴応答データ生成ツールの作成
佐藤 晟悠  productivity-戦後日本における高層建築施工の生産性評価の変遷に関するアーカイブ
鈴木 啓一郎 Digital/Natural
住谷 優季  地震波の違いによる簡易的な応答比較可視化プログラム
寺田 響   地域工務店から排出される新築系建設廃棄物の適正処理促進に向けた提案
中谷 優太  地震リスクに対する建築設備の復旧過程計算ツールの作成
古橋 恒太  型枠DIYの手法考察
松永 響   室内吸音設計の設計支援システム
三村 実樹子 Mon Chateau Hotel
八木 健悟  空気椅子の近似 Lattice^n骨組を用いた椅子の設計 奨励作
割鞘 奏太  ajisai  中村達太郎賞
山本 隼也  三角関数式固有値計算プログラム