University of Tokyo – Department of Architecture

2015 Graduation Production

2015

辰野賞

常松 祐介     会所地を立体化する
 (日本建築家協会関東甲信越支部「第25回 東京都学生卒業設計コンクール2016」銀賞受賞,
  合同講評会 乾久美子賞)
出射 有紀子    Block Stair Roof 
 (日本建築学会「全国大学・高専卒業設計展示会」出展)

中村達太郎賞

後藤 健吾     テンセグリティ構造の可能性ー喫煙所設計を例としてー

奨励作

Aコース(設計)
木戸 聡    誰そ彼
國賀 陽南子  THE VITAL CIRCULATION OF NEW TOWN
 (合同講評会 千葉学賞)
坂本 陽太郎  浅草六区劇場群ーヒラキの再解釈としてー
 (近代建築社「卒業制作2016」出展)
ジョ カギョウ 過ぎ去るオリンピックーWhen Olympics Elapseー
 (日本建築家協会関東甲信越支部「第25回 東京都学生卒業設計コンクール2016」出展,合同講評会 中山英之賞)
鈴木 史佳   都市のトラウマを克服する
野畑 剛史   The Urban Bay
古澤 えり   √六本木
 (レモン画翆「第39回 学生設計優秀作品展」出展)
山田 理香子  月島はわたしの庭

Bコース(研究)
チョウ ガンロ Structural Ribbonー接線曲面の形から構造までー

選評

Aコース(設計)
常松 祐介  会所地を立体化する《辰野賞》 
上野広小路の商業地区で江戸期から残る街区構成に着目し、かつて住民の生活空間であった「会所地」を現代的に復興する計画。個人商店が大型チェーン店に変わったことによる街の均質化や、東京のホテル不足など、現代の社会問題をふまえながら、歴史的な空間構造を生かした解決案は、視野の広い構想力を示すものとして高く評価された。緻密なリサーチに裏打ちされた分析と、既存の空間に繊細な構造を重ねて魅力を引き出すデザインは、そのレベルの高さが認められた一方で、やや開放的に整えすぎた面が元の魅力を減じてしまったのではないかとの指摘もあった。

出射 有紀子  Block Stair Roof《辰野賞》 
作者の出身高校の立て替え計画である。豊かな自然の中に、文化財建築が点在する明治7年創立の歴史ある高校だが、歴史的な遺構と現在利用されている校舎との関連がなく、うまく活用されているとは言えない状況である。外周部に残るレンガの基礎や石垣をきっかけとして、人の集まる場を設計し、校舎も文化財との関係を考えながら設計することで、歴史を継承しつつ、学校を開き、地域と接続することを目指した。非常に丁寧なリサーチから作者の地域への思い入れが感じられ、小規模な空間をひとつひとつ丁寧に設計していること、また建て替えを段階的に設計している時間軸をもった計画であるところが高く評価された。

木戸 聡  誰そ彼《奨励作》 
築地市場の移転計画をふまえ、既存市場の建物を移民受け入れのための諸施設にリノベーションする計画。少子高齢化が進むなかでも移民受け入れの議論が進まない日本の現状に対する批判意識と、築地市場の移転問題を結びつけた、社会的かつ独創的な課題設定が評価された。既存の円弧を描く建物形状や大きな内部空間を生かした設計は秀逸であるが、高層棟を付加することで象徴性を高めたことが、移民の日常空間ともなる施設としてふさわしいのか、という指摘もあった。

國賀 陽南子  THE VITAL CIRCULATION OF NEW TOWN《奨励作》 
横浜港北ニュータウンに、商店や公共サービスを乗せたLRTを使って、新しい形式の商店街を出現させる、という計画である。郊外の住宅地における、スプロール、高齢化という問題に対して、モビリティを新しい公共サービスとして使って行くという考え方が高く評価された。具体的には、LRTの経路、LRTを受け入れる大・中・小の駅、そしてLRTの車両が提案されたが、LRTを受け入れる駅の設計の密度が薄く多様性がなかったので、案の可能性が活かされていない点が惜しかったが、ヒューマンスケールから都市スケールまで横断した提案となっている点は秀逸だった。

坂本 陽太郎  浅草六区劇場群ーヒラキの再解釈としてー《奨励作》 
周囲に対して閉じてしまっている現代の劇場を、江戸自体の観劇のための最小空間=ヒラキの再解釈を通して、開かれた場として設計した。巨大なアトリウムの周りに、沢山の小規模な演劇空間が立体的に展開する作者の空間構想力が存分に発揮された力作である。イベント後の賑わいを受け止めることができない既存の劇場に対して、内部の祝祭空間を用意したことは、カウンター案として非常に面白い一方で、救心性が強い形式のため、それぞれの活動が開かれていながらも建物の中で完結しているのが惜しい、という指摘もあった。

ジョ カギョウ  過ぎ去るオリンピックーWhen Olympics Elapseー《奨励作》 
東京オリンピックの競技場の提案である。明治神宮外苑のもともと全ての市民に開かれた運動施設という趣旨と同じく、周囲に対して閉じがちな従来のスタジアムを市民に開かれた場にするという挑戦を、大きく波打つフレームと、仮設のストラクチャーユニットを使うことで実現しようという案である。機能と同時に、構造的に成立させる形を検討した上で、客席を取り除くと広場になってしまうという鮮やかさが高く評価された。例えば古代ローマの円形競技場の中には、100年間競技場として利用されたのち、1500年間の間に軍事要塞になったり、家が集まって都市になったり、と様々に利用されたものがある。オリンピックなどのイベント後の利用だけでなく、もっと遠い未来への想像力もかき立てられる意欲的な作品である。

鈴木 史佳  都市のトラウマを克服する《奨励作》 
施設の中で活動が完結しがちなリハビリ施設を、広尾という都市の中心に設計し、都市に開いて行く試みである。階段状の屋根をもつ複数のボリュームを積み重ねて、全体を構成している。階段状の屋外空間には手摺による居場所が随所につくられていて、ランドスケープに彩りを添えている。全体的に設計や模型の作り込みの密度が高い力作である。これから益々必要となってくるリハビリ施設を都市の中心におくという点、詳細な部分の設計について高く評価される一方で、建築がオブジェクティブなので、敷地に対して施設然とした建ち方になってしまっている点、特に地上レベルでの敷地と建物との接続性が弱い点などが改善点として指摘された。

野畑 剛史  The Urban Bay《奨励作》 
品川の鉄道新駅構想に水運を結びつけた提案。東京湾からの水運と鉄道駅を結びつけることで、羽田空港や、周辺観光地までを含めた都市経験の提案として評価された。1キロ程度に及ぶ長大な建築を、複雑な曲面、水、植栽などを用いてダイナミックにまとめる造形力が評価されたが、奥行の深い建物の内部空間や地面との接点の提案が希薄であり、解像度を上げた提案がほしいという指摘もなされた。

古澤 えり  √六本木《奨励作》 
現代都市に増えていく超高層建築のオルタナティブ案。これまでの超高層建築は周辺地域や歴史から「分断」され、内部においても個々に「分断」されているという批判意識のもと、複数の敷地をまたいでつなぐダイナミックな超高層建築を提案し、強い問題提起力が認められた。現実性や、既存の街をまたぐ暴力性という観点で疑問があるものの、大胆な造形を支える形態生成原理の提案やプランニング力は高く評価された。

山田 理香子  月島はわたしの庭《奨励作》 
月島の密集市街地の再開発計画案。通常の再開発では防災と経済性から既存の街をクリアランスしようとするに対し、路地を「公開空地」と読み替えることで、新しい高層マンションと路地のある街並を共存させようとする論理的な提案。開発と保存を両立させようとする現実的な手法が高く評価された一方で、実際にそこに住む人々がどのように暮らすのかがイメージしにくく、具体的なプログラムなどの提案がほしいという指摘もなされた。


作品リスト(53名)

Aコース(設計)
前田 瑶介 Park, Be Park
青木 真 Porus Urban Platform
秋岡 安季 水と人が流れる街、蔵前
石中 斐子 twist theater
石原 幸奈 ビーチで育ち、ビーチにのこす
出射 有紀子 Block Stair Roof 辰野賞
岩田 会津 橋の東京都市計画
大池 倫正 明日への船
亀田 真由 幻燈の終
木戸 聡 誰そ彼 奨励作
栗田 直樹 Jingu Baseball Park
國賀 陽南子 THE VITAL CIRCULATION OF NEW TOWN 奨励作
齋藤 耕太郎 日本の林業都市のあり方を考える
阪田 実 DESIGN MUSEUM OSAKA
坂本 陽太郎 浅草六区劇場群ーヒラキの再解釈としてー 奨励作
四宮 駿介 Micro Infra City
ジョ カギョウ 過ぎ去るオリンピックーWhen Olympics Elapseー 奨励作
杉山 主水 SHARE DISTRICT
杉山 結子 江島浪々
鈴木 史佳 都市のトラウマを克服する 奨励作
高田 遼介 島が島であるために
竹村 健司 都市のQuiseigeー綱島温泉neo東京園ー
土山 怜美 みんなの丘
筒井 健介 コマバ・デポジションー人の流れとしがらみー
常松 祐介 会所地を立体化する 辰野賞
中川 隼人 伝統と誇りのための設計主義
中河西 菜々子 土地の記憶をデザインする
西村 俊貴 木を、人を、次の世代へ
野畑 剛史 The Urban Bay 奨励作
萩原 まどか 地面をめくる
久松 貴一 練馬書店ーフロアとプロムナードー
藤岡 修平 VALLEY in the City
古澤 えり √六本木 奨励作
堀内 耀介 都市を巡る架橋
益田 太平 temporary box
増田 文香 NAKANO SLOPEWAY
村田 百合 Linear Library
八百山 太郎 NOW SHOWING 超高層映画街
山田 理香子 月島はわたしの庭 奨励作

Bコース(研究)
栗林 煕樹 炭酸ナノバブルの炭酸化性能とコンクリートの緻密化性能比較実験
小森 宏祐 建長寺仏殿の倒壊解析ー柱貫接合部の構造性能評価からー
遠藤 実  円形鋼管ノンダイアフラム構法によるラーメン骨組
小山 洋登 東日本大震災における応急仮設住宅の解体計画の作成
金井 純平 超弾性合金を用いた床免震の開発
工藤 高弘 昇温脱離法(TDS/TPD)を用いたコンクリート構造物の劣化診断方法の提案
後藤 健吾 テンセグリティ構造の可能性ー喫煙所設計を例としてー 中村達太郎賞
田嶋 優樹 Lighting Box
谷道 鼓太朗 The District Sleeps Alone
チョウ ガンロ Structural Ribbonー接線曲面の形から構造までー 奨励作
西村 祐哉 GLASS WELDING
松原 健  シラス高度利用の可能性
山田 健太郎 ビル構造物の連結による振動制御
吉原 尚平 連結完全混合槽型水蓄熱槽における連通管配置施工不具合の再現