University of Tokyo - Department of Architecture

Diploma Design 2014

diploma2014exhibition

辰野賞

平山 貴大     Tokyo Junction
 (日本建築学会「全国大学・高専卒業設計展示会」出展)
内田 遥      Ginza Gateway
 (日本建築家協会関東甲信越支部「第24回 東京都学生卒業設計コンクール2015」栗生賞受賞)
パンティラー ジューラヤーノン Providing the Flow to Slum
 (日本建築家協会関東甲信越支部「第24回 東京都学生卒業設計コンクール2015」末光賞受賞)

中村達太郎賞

割田 聖洋     3種類のコンクリート補修剤とコンクリート細孔内反応モデル

奨励作
Aコース(設計)

川崎 裕太   都市の吹き抜けに佇む
今枝 秀二郎  New Asclepeion
大坂 高敬   ここで生きていく
 (近代建築社「卒業制作2015」出展)
ソン ケイエイ 凹凸ー中国藩陽市北市場地区小劇場群計画提案
辻 繁輝    巡る船は街を紡ぐーこれからの都市河川のあり方ー
関 望里    隠遁の思想
 (レモン画翆「第38回 学生設計優秀作品展」出展)

Bコース(研究)
近藤 利明   StructMonitor

選評

 2014年度の卒業制作Aコースは総じてレベルが高く、選定されなかった案も含めて力作が多かった。独自のスタンスで社会と向き合ったテーマ設定により、社会性を持ちながらユニークで多様な可能性を示す提案が数多くあったことは、とても心強く感じられた。リサーチのレベル、プレゼンテーションの技術なども高く、さらに磨きをかけてほしい。しかし、リサーチの充実が良い作品を生み出す一方で、解説文が多くなり過ぎることは望ましくなく、簡潔な表現を心がける必要がある。Aコースは卒業「設計」なのだから紙面を文字で埋めるのではなく図面・絵を中心とするべきである。

Aコース(設計)
平山 貴大 Tokyo Junction 《辰野賞》

 2020年に開催される東京オリンッピックパラリンピック以降に縮退するという東京のイメージに対抗して、レインボーグリッジをくぐれない巨大客船も停泊できる「海の玄関」を設計した。都心への中継点でしかなかったこれまでの湾岸埋立て部に対し、ローカルな舟運の発着場を運河に見立てて内部に計画することにより、ローカルとグローバルの結節点として東京を活性化するとともに、成熟した都市にふさわしい心の豊かさを取り戻すツールになるという計画趣旨は高く評価された。一方、「つなぐ」という趣旨であるにもかかわらず建物が閉鎖的であり、もっと周辺とのつながりが示された方がよいという指摘もなされたが、複合的機能の説得力、プレゼンテーションの卓抜さなどは高く評価された。

内田 遥 Ginza Gateway 《辰野賞》
 銀座という街の特徴を、百貨店の巨大ファサードやブランドイメージで構成される華やかな表通りと、ひしめき合うペンシルビルと隙間として現れる裏通りが共存することと捉え、その多様性を排して一方的に拡張しようとする百貨店の再開発計画に異を唱える意欲作である。オモテの百貨店にウラの雑居ビルを取り込むという基本構成のなか、両者間の滑らかな行き来を可能にする多様な「みち」と、緩衝装置でありながらサインともなる「のれん」というアイディアを様々に適用し、均質になりやすい商業空間に都市的な魅力を付与する提案が評価された。本来は見えないはずの雑居ビルの側面や背面が現れてオブジェクト化してしまっている、新築の雑居ビルの位置付けがやや演出過剰である、といった指摘もなされたが、百貨店と雑居ビルの異なる時間を重ね合わせるというアイディアは高く評価された。

パンティラー・ジューラヤーノン Providing the Flow to Slum 《辰野賞》
 バンコク最大のスラムであるクローントイスラムの環境改善計画。港湾局によって進められたスラムクリアランスを含む開発計画が停止された原因や、スラム内で起こっている問題を明解に示した上で、時間をかけて現実的に環境を改善する提案趣旨は極めて高く評価された。スラムに運河を通すことで、地盤改良を進めて生活環境を改善し、周辺地域との関係を調整し、観光客も巻き込んでスラムの人々のチャンスにするという一連の計画は、極めて難しい現状に対して「全ての立場のメリットとなる」「サスティナブルな解決策」として強い説得力を持っている。提案された住宅がやや画一的で閉鎖的に見えるという指摘もあったが、地域性や防犯性を考慮したピロティ、セルフビルドに対応する工法など、住民生活を考慮した丁寧な提案は、上述の都市的視点と合わせて高く評価された。

川崎裕太 都市の吹き抜けに佇む 〈奨励作〉
 南新宿に現在計画中の高層建築によって線路敷の貴重なヴォイドが失われることを批判する対抗案である。鉄道という都市のインフラが地盤の下に隠されて感じられなくなることを問題ととらえ、線状の路線に沿うリニアな建築の集合体を設計することで、人々が移動する、あるいは佇むことによって都市のダイナミズムを感じ取ることができる空間が評価された。周囲とのつながりの設計が不十分である、高速バス乗り場という設定に対して形態が見えにくい、などの指摘もあったが、サザンテラスの魅力の再発見から街と鉄道の関係という都市の普遍的問題に光を当てたことは高く評価された。

今枝秀二郎 New Asclepeion ー仙台東口駅「駅裏」再開発30年計画ー 〈奨励作〉
 超高齢化社会を迎えた日本の医療環境の問題に正面から取り組んだ意欲作。建築計画学として取り組んだ自身の研究をふまえ、高齢者とそれを支える人々を含めた「日常性をもった医療環境」が求められるという前提に立ち、都市の再開発手法や、時間を組み込んだ計画など、社会性をもった広い視点から建築を考える姿勢が高く評価された。その一方で、最終的に設計された建築は集約的な巨大構築物となってしまっており、果たしてこの形がふさわしいのか、という疑問も呈された。やや解説が多すぎるという指摘もあったが、研究をふまえた密度の高いプレゼンテーションは高く評価された。

大坂高敬 ここで生きていく 〈奨励作〉
 殺処分される犬の割合が多いという日本の問題を正面から見据え、200匹の犬のための訓練施設を渋谷に計画するという野心作である。人間と犬の関係の歴史、ペット産業の問題、動物愛護センターのような既存の制度の限界などを冷静に分析した上で、あえて人目に触れる渋谷に施設をつくる意味を主張する提案力が評価された。動物行動学にもとづいたスロープ主体の設計や、犬と人間が共存できるプログラムの設定なども評価を受ける一方、スロープと箱状のボリュームのバランスや、構造の考え方などの点で、より開放的でふさわしいデザインもあり得たのではないかという指摘もなされた。

ソン・ケイエイ 凹凸 ―中国藩陽市北市場地区における小劇場群計画提案 〈奨励作〉
 中国の藩陽市の北市場に、様々な民俗芸能を行うための小劇場群を設計し、人々が日常的に交流する居場所を提供する計画案である。近年の中国の急速な発展によって都市空間は効率が最優先され、かつての人間的な空間尺度が失われたこと、それに伴い、かつて藩陽市で最も繁華で民間芸術の発信地でもあった北市場地区の賑わいも失われてしまったことなど、社会的背景をふまえた緻密な提案が評価された。都市に埋もれてしまっている様々な民俗芸能を復興するための小劇場群という提案に対して、テーマパークのようで周辺の街とのつながりが見えにくいという指摘もあったが、凹凸を多く設けることによる魅力ある動線や、伝統的な屋根形状を利用した居場所の創出など、人間的スケールを考慮した細やかな設計は高く評価された。

辻繁輝 巡る船は街を紡ぐ ―これからの都市河川のあり方ー 〈奨励作〉
時に街を断絶させてしまう都市の河川を人々が活動するための「空地」と捉え直し、それぞれの街の特徴を生かした新しい舟運と、それを支える建築を提案した。かつて人々にとって身近な存在であった東京の水辺空間が1964年の東京五輪を契機としたインフラ整備によって失われたことをふまえ、次の2020年の東京五輪を目指して東京の水辺を再考させようという都市的な問題意識が評価された。4つの水辺を敷地として選び、それぞれの街の魅力を生かしながら結びつけるという公共的な提案に好感が持たれたが、現実的な自然の脅威に対する配慮や、親水空間というややステレオタイプ的前提を越える提案があると望ましかったという指摘もなされた。

関望里 隠遁の思想 〈奨励作〉
 現代の大量消費社会における人間的な不安に対し、食事という行為によって自らを見直すための最小空間を提案した。自らで建設、維持、解体、再建設ができるということを設計方針として立て、実際に一分の一スケールで組み立ててみせた実行力が評価された。素材のリサイクルのようなより直接的な社会問題につなげることや、実際につくったことを生かした施工法の開発など、より発展性があると望ましかったという指摘もあったが、建築の原点とも言える開放系建築の楽しさを表現したことは高く評価された。

Bコース(研究)
割田 聖洋 3種類のコンクリート補修剤とコンクリート細孔内反応モデル 《中村達太郎賞》
 既設コンクリート構造物の維持管理はこれからの日本の安全安心を保つ上で極めて重要であるが、膨大なコストや手間がかかることが近年の社会的な課題になりつつある。割田君の提案するコンクリート補修材は、既存の補修剤のアイディアを含みながらも、オリジナリティが加えられている。また既存の工法からの比較、コンクリートの細孔溶液に対して、どのように働くのかを、補修剤が含浸したときに生じる反応を見せる「可視化」の工夫がされており、それぞれの補修剤の効果を検証した数式モデルとの相乗効果もあって、見えにくい技術の詳細をわかりやすく効果を伝えることに成功している。今後の技術的検証を考えると荒削りな面があるが、工学的な知見に裏打ちされた技術を、実務的な視点、理論的な視点の両面から、利点と課題を率直に整理した上で、適用の可能性をうまく提案している点が、高く評価された。

近藤 利明 StructMonitor 〈奨励作〉
スマートフォンの加速度計を用いて震度計算ができるアプリケーションは、これまでいくつか存在していたが、構造ヘルスモニタリングの機能を備えているものはなかった。近藤君の提案する新しいスマホアプリStructMonitorは、実際にプログラミングによって作成され、地震前後の建物の応答振動数や減衰の仕方の変化を見ることで、地震による建物の構造に影響が出たかどうかを判別する構造ヘルスモニタリング機能を組み込んだ始めてのものである。また、研究用に用いられる一般的なツールによる測定結果と比較することで測定精度についても実証している。スマートフォンによって、一般の人にも直感的かつ実用性の高いツール開発を行ったことが高く評価された。


作品リスト
Aコース(設計)

川崎 裕太 都市の吹き抜けに佇む 奨励作
池田 知穂 影を探す人
泉 勇佑 Bower in the woods
今枝 秀二郎 New Asclepeion 奨励作
内田 遥 Ginza Gateway 辰野賞
海老原 利加 谷山の創成
大坂 高敬 ここで生きていく 奨励作
軽部 達也 Urban Farming
菊池 豪 商業と文化を歩く
木村 恒希 アナグラム秋葉原
小林 楓子 2020年から始まる新しい晴海
パンティラー ジューラヤーノン Providing the Flow to Slum 辰野賞
ソン ケイエイ 凹凸ー中国藩陽市北市場地区小劇場群計画提案 奨励作
舘林 恵介 屋根の下でつながる学校
種橋 麻里 身体の記憶
津久井 悠太 野菜籠を、フラヌールたちに。
辻 繁輝 巡る船は街を紡ぐーこれからの都市河川のあり方ー 奨励作
中野 友香 これからの集合住宅団地
橋本 剛志 畸形のランドスケープ
原田 優作 坂の町の結節点
平木 達也 Shell over the Dome
平山 貴大 Tokyo Junction 辰野賞
古谷 知華 歌舞伎町裏都市計画
細川 絢介 Connected City
前田 真美 百花繚乱
松田 真理子 共働きする超高層
宮田 翔平 REMEMBER THE SURFACE
宮本 隆子 記憶の保管庫
守屋 暁 variable architecture
吉田 清香 ぼくのまち、みんなの場所。
関 望里 隠遁の思想 奨励作

Bコース(研究)
井田 慎太郎 「ステージ型」応急仮設住宅ー建材の再使用に向けた足回りのアプローチー
小西 慶 鉄骨構造物の経年劣化に関する研究~軍艦島71号棟~
藤田 優也 コンクリートの内部温度推定及び有効材齢による強度推定に関する研究
古堅 厚人 津波被害を受けた木造建築の補修に関する研究模型によるその可視化
大江 諭史 現代版「地震の間」
近藤 利明 StructMonitor 奨励作
長田 美咲 建築材料の熱伝導率に関する基礎的な研究
西川 麻里奈 代官山駅照明計画
武藤 千明 木材資源の成長速度と伐採速度に基づくカーボンフットプリントの地域変動に関する研究
山元 博貴 樹脂窓のすゝめ
割田 聖洋 3種類のコンクリート補修剤とコンクリート細孔内反応モデル 中村達太郎賞
米村 美紀 1H-NMRを用いたセメント硬化体の細孔構造分析