University of Tokyo - Department of Architecture

2016年度卒業制作

辰野賞

岡本 圭介  うごめく都市の中で
 (日本建築家協会関東甲信越支部「第26回 東京都学生卒業設計コンクール2017」出展)
五十嵐 宇晴  Eclosion: the Martian Vernacular
 (日本建築家協会関東甲信越支部「第26回 東京都学生卒業設計コンクール2017」出展)
國江 悠介  Better Life in St.Marhta Estate
 (日本建築学会「全国大学・高専卒業設計展示会」出展)

中村達太郎賞

石田 崇人 Project : CoRPO

奨励作

Aコース(設計)
朝原 真知子 窪みのある街
足立 壮太  まちのツボニワ
 (近代建築社「卒業制作2017」出展)
小川 真純  (Dis)Closed City
何 競飛   剥キ出シノ生 ・ 軟禁都市
小島 央大  UBIQUITOUS CINEMA/TIC YOKOHAMA
櫻井 理沙  ゲートガヒラクトキ
 (レモン画翆「第40回 学生設計優秀作品展」出展)

Bコース(研究)
酒井 健人  アラミドロッド挿入目地置換工法における引き抜き破壊とロッドの表面形状の関係性
志村 真人  反発性の違いを利用した硬質/軟質PVC選別装置の開発
北島 宏   超巨大地震力を受けたときのノンダイアフラム構法3F建てオフィスビル破壊シミュレーション

選評

2016年度の卒業制作は、例年に比べて全体としてのレベルが高く、賞や奨励を受けられなかった作品にも見応えのあるものが多いと評価された。Aコースでは、辰野賞に選ばれた三作品がよく表しているように、プログラムに即した建物をつくるだけの建築の枠を大きく越え、独自に課題を発見して提案にまで結びつける、課題発見型の姿勢が広く共有されていた。Bコースは、元より建築表現の可能性を広げることをテーマにしているが、人々に課題や意味が伝わるものをつくるという表現本来の姿勢が浸透し、Aコースとの相乗効果が現れてきている。A,Bコースとも、今年度は制作物(模型など)が大きくなる傾向があった。それは表現力を高めたいという積極的な意欲を示すものではあったが、単に大きくすれば伝わるというわけではなく、ねらいを持って表現を工夫するように注意したい。

Aコース(設計)
岡本 圭介  うごめく都市の中で 《辰野賞》

渋谷において独自に育まれてきた路上文化を、渋谷再開発のプロセスの中で活性化するための施設の提案である。渋谷再開発のプロセスを精緻にリサーチし、それをデザインに組み込むことを試行した点が高く評価された。一方、作者が主張する都市の祝祭性ということを考慮した場合に提案されている形態要素に統一感がないことや、渋谷駅そのものとの関係性に対する意識の希薄さが指摘された。

五十嵐 宇晴  Eclosion: the Martian Vernacular 《辰野賞》
火星における滞在施設の提案であるが、火星に場所性を見出し、それを考慮した建築形式を生み出そうとした意欲作である。
クレーターを敷地とし、前哨基地を建てるフェーズから最終的にホテルなどのレジャー施設、さらには月や地球が見える祈りのための施設が作られるまでのフェーズまで、時系列に沿って計画を提案している。綿密なリサーチをもとにした計画は高く評価された一方、火星の特殊な環境条件から建築形式を追求したとするには全体的なデザインに既視感がある点が指摘された。

國江 悠介  Better Life in St.Marhta Estate 《辰野賞》
フィリピンのスラム地区における住環境の改善の提案である。現地において、住戸内部調査やベンチを設置するなどの活動を通して、地域住民の増改築の拠点となる工房の計画と、住環境の改善のためのまちづくりの仕組みの提案をおこなっている。講評では、実際に現地で活動したことについて高く評価された一方、計画が設計者の意図通りに実現する可能性に対して楽観的にすぎるのではないかとの指摘もあった。また、地域住民の日常のふるまいの延長上で何ができるかをより深く考慮した上での提案をおこなえたのではないかとの意見も挙がった。

朝原 真知子 窪みのある街 《奨励作》
テレワーカー(在宅勤務者)のコミュニティにおけるあり方を題材に、テレワーカー同士が交流する地域の拠点を住宅地域内に提案した作品である。
テレワークのためのブースに加え、託児所や介護施設、食堂など様々な機能を、地上に突出したボリュームではなく地下に掘られた窪みとして設けるという独創性が評価された。また、張弦構造を用いることによって、軽やかな空間になっていることも魅力的であった。一方、周辺の住宅街との関係性に対する提案が希薄である点や、地下にすべての機能をおさめた点についての説得性に欠ける点が指摘された。

足立 壮太  まちのツボニワ 《奨励作》
兵庫県篠山市河原町地区(城下町・伝統的建造物群保存地区)を対象に、商家が建ち並ぶ街道の裏側をツボニワとして計画することによって、住民の居場所を創出する計画である。
伝統的建造物群保存地区では、表側(街道側)の保存等が注目されがちだが、その表と裏をつなげた計画である点が高く評価された。一方、プレゼンテーションがその魅力を十分に伝えられていない点が課題として挙げられた。また実際に地元で活動を行う住民に対するインタビューなど、丁寧なリサーチに基づき提案を行った点が高く評価された。

小川 真純  (Dis)Closed City 《奨励作》
東京竹芝臨海部と敷地とした、物流倉庫と商業・文化・スポーツ機能が複合する施設の提案である。大規模で閉鎖的な倉庫に劇場やスポーツ施設などの様々な都市機能が貫入することで、Amazonなどのeコマースが普及し都市の消費体験がネット空間上の体験に移行した現代における都市体験とは何かを考察した点が高く評価された。一方、都市との関係性の希薄さや、物流倉庫と他の機能との関係性が単なる視覚的体験のレベルに留まっている点が指摘された。

何 競飛  剥キ出シノ生 ・ 軟禁都市 《奨励作》
とある人物が政府によって危険人物とされ、生活の中で選別され軟禁されるまでの物語を建築を用いて表現した意欲作である。主人公が危険人物として分類されてしまう図書館、他の市民から選別される駅、そして軟禁されるショッピングモールという3つの建築を計画している。近年見られなかった物語としての建築の可能性を追求した作品であることが高く評価された一方、図面表現の可能性が十分に追求されていない点に指摘が集中した。

小島 央大  UBIQUITOUS CINEMA/TIC YOKOHAMA 《奨励作》
横浜のみなとみらい地区に、ホテル、オフィス、店舗、展示スペースなどと複合したシネマコンプレックスを計画した。従来のシネコンでは映画館は単なる通過エリアになっているという問題意識から、映画館を敷地全体に分散配置し、それぞれの場所の特性を活かして、SKY CINEMA、CINEMA STREET、LIBRARY CINEMA、ART HOUSEなど多様な映画館を構想したことは、映画と建築の経験を融合する意欲的な試みとして評価された。みなとみらい地区の特徴を意識したダイナミックな外観は、迫力ある模型によって説得力を持っていたが、模型と図面からは都市環境における経験的つながりが読みにくく、やや残念であった。

櫻井 理沙  ゲートガヒラクトキ 《奨励作》
精神病院における障害者の社会的自立を支援し、精神病院と周辺地域との交流を活性化させるための拠点の提案である。地域と病院の境界となっている京王線の高架下を敷地に選定し、様々なスケール・形状をもったラティス構造の柱状ユニットを配置し、交流のための仕組みをデザインしている。敷地の設定や個々のデザインについては評価された一方、病院のプログラムの配置計画が不明瞭である点への指摘や、周囲の地域がどのように精神病院と関わることができるのかということについての具体的な展望が必要ではないかとの意見が挙がった。

Bコース(研究)
石田崇人  Project:CoPRO 《中村賞》

集合住宅の修繕積立金というファイナンスの問題に取り組んだ作品である。
現代的な課題を捉えた重要な提案であることが評価された。また丁寧にプログラムを組んだ上で、最終的に外装材を対象にハードの計画へと昇華させており、精度の高い分析と提案が評価された。提案では200年という長いタイムスパンが設定されていくが、その中でプログラムが学習していき、常に最適なプランへと変更していくことの可能性なども指摘された。

酒井 健人  アラミドロッド挿入目地置換工法における引き抜き破壊とロッドの表面形状の関係性 《奨励作》
解析的にも実務レベルにおいても難しいとされる組積造の課題に挑んだ意欲的な作品である。アラミド繊維の編み方の違いによる強度の違いに着目し、その表面形状を含めて非常にわかりやすく明快に提案している。特に組積造の耐震補強に課題を抱える地域が多い中、面外方向の破壊を止める有効な手段を提示している点が高く評価された。

志村 真人  反発性の違いを利用した硬質/軟質PVC選別装置の開発 《奨励作》
硬質/軟質PVCが持つ反発性の違いを利用して、木材を使った選別装置を開発した作品である。
提案が非常にわかりやすい点、また環境配慮等の観点から今後重要な課題となるテーマに取り組んでいる点が評価された。より正確に選別するためにPVCを球体に加工すること、壊す前に選別を行うことの可能性などが指摘された。

北島 宏  超巨大地震力を受けたときのノンダイアフラム構法3F建てオフィスビル破壊シミュレーション 《奨励作》
日本では導入が進んでいない、ノンダイアフラム形式の柱梁接合部を用いたS造3階建てオフィスビルの設計を行った作品である。
丁寧な解析を行った上で、設計方法の提案にまで到達していた点が評価された。また接合部の変形形状の分かりやすい模型を作成しており、プレゼンテーション技術の高さも評価された。本人の説明にもあったが、構造体の高い変形能力を設計に反映しようとする場合には、非構造部材をどのように扱うかが今後の課題として挙げられた。


作品リスト 64名(63作品)

Aコース(設計)
金森 憲斗  本と共に生きる
神田 晃佑  繋がる場
イ ヘウォン  心字池舞台
佐々木 裕香  交編
島浦 航輝   The Condition of Architecture
田端 祥太  本庄 蔵活用まちづくりプロジェクト
平井 雅史  TOKYO KINETIC GATE
朝原 真知子  窪みのある街 奨励作
足立 壮太  まちのツボニワ 奨励作
飯野 寛大・中野 耀  Neo Green Parking 〜これからの立体駐車場へ〜
五十嵐 宇晴  Eclosion: the Martian Vernacular 辰野賞
磯部 宏太  境界に集う
井上 渓  つなぐ ・ ツナガル
内田 早紀  道を紡ぐ まちをつむぐ
榎 隆明 小さな大地をとりもどす
遠藤 健一郎  OYSTERTHEK
大野 敦史  移ろう建築 〜冬と夏〜 休業 表万座スキー場を例に
岡本 圭介  うごめく都市の中で 辰野賞
小川 真純  (Dis)Closed City 奨励作
小津 宏貴  ニュータウン裏で会えたら -高齢化したニュータウン近傍における滞在型高齢者共同体の設計-
何 競飛  剥キ出シノ生 ・ 軟禁都市 奨励作
梶原 裕希  CONVENIENCE STOP
勝家 彰拓  RE CONSTRUCT THE BORDER
亀田 智太  inside out, outside in
川地 美代子  Sakae Cultural Road
キョウ キンケツ  囲い
國江 悠介  Better Life in St.Marhta Estate 辰野賞
小島 央大  UBIQUITOUS CINEMA/TIC YOKOHAMA 奨励作
齋藤 真也  砂漠の老人
櫻井 理沙  ゲートガヒラクトキ 奨励作
高田 雅文  とどまる、みつける
中村 裕太  Counter Ground
中村 遼  MIMITSU PROJECT
南雲 穂波  by the tree
二居 佳司  ハコ→ニワ - garden city hall –
荷方 なつみ  くまもとアクアリウム
西崎 麻由  福祉のさんぽ道
西村 蒼  道
藤原 亮  立体化する都市の街路
前田 裕実  根津の図書館
松田 涼  KANDA VALLEY
山本 遼子  この場所とであう
吉岡 龍太朗  KANDA RIVIVAL

Bコース(研究)
近藤 寿華  木質集成材の劣化予測に向けた木材中の水分挙動に関する研究
白髭 龍  軍艦島建築群の保存考
岡本 拓仁  手動振動台の制作と、五重塔模型を用いた補強効果の検証
川嶋 浩太  地震動による木造住宅の破壊と壁の強度の関係について
川本 晃平  フラクタル次元解析の活用 -東日本大震災被災地の街並みの複雑さの変化を通して-
酒井 健人  アラミドロッド挿入目地置換工法における引き抜き破壊とロッドの表面形状の関係性 奨励作
佐々木 達史  ビルの屋上を用いた園庭の設置計画について
志村 真人  反発性の違いを利用した硬質/軟質PVC選別装置の開発 奨励作
西川 宏作  ペンローズタイル型音響拡散体の開発 -縮尺模型実験による音響散乱特性の検証-
石田 崇人  Project : CoRPO 中村達太郎賞
岩永 薫  Genius Loci 記憶の積もる場所
河村 京介  Fuzzy Node
北島 宏  超巨大地震力を受けたときのノンダイアフラム構法3F建てオフィスビル破壊シミュレーション 奨励作
酒井 友維  葬送にみる死者の空間
永山 光  9階建て事務所ビルの建設コスト比較
久永 真子  コンクリート補修剤に関する新しい性能評価手法の提案
星野 翼  ディープラーニングによる地震被害の自動判定
堀 友洋  動画撮影による建物の地震被害透視診断
結城 阿育  都市部における二酸化炭素の動きの再現実験
米沢 祐人  賃貸物件情報の定量的評価をもとにした、賃料に対する諸要因の内訳を導出するプログラム